よもやま茶飯事

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紹介営業の本を読んでみた

会社に数ある部署の中で、最もストレスが大きいのは営業部門だろう。売上目標が課せられるだけでなく、新規顧客の開拓も求められると、営業担当者にかかる負荷はかなり大きくなる。このため離職率も高くなりがちだ。

 

振り込め詐欺のような特殊詐欺では犯人たちがリストを元に手あたり次第、電話をかけている。電話をさせられている連中と、新規の顧客開拓でテレアポをしている営業担当者とは似たり寄ったりの境遇にあると言える。

 

私も新規顧客開拓(法人向け)のテレアポの経験があるが、断り続けられることに加え、見込み客になりそうな相手との会話に集中する緊張から、だいたい1時間~2時間で疲労困憊する。

 

これに対し本書の著者は会社員を辞め、独立開業して以来、手間のかかる新規の顧客の開拓営業をせず、紹介営業によって顧客を増やし続けているという。本書では既存の顧客から自然に紹介をもらえるようになる方法や、紹介営業が成り立つための手法を取り上げているというので読んでみた。

 

「どうしてあの人は私を紹介してくれるのか?」の表紙の写真

どうしてあの人は私を紹介してくれるのか?

 

構成は次のような章立てになっている。

  1. 顧客に評価され、価値を創造する営業のあり方
  2. 顧客との仕事、人生での関わり方
  3. 商談での勝負の仕方
  4. 紹介営業を成立させるためのポイントのまとめ

 

著者によれば、間違った営業方法とは何の価値創造もできずに、単に活動量を多くしている場合だ。その結果、製品やサービスの案内営業になってしまう。重要なのは活動の量ではなく、顧客との間で価値を創造することを目的に営業活動を行うことだと言う。

 

そのためには顧客との永続的な関係構築が課題であり、10個のポイントを紹介している。そのうち3つは次の通りだ。

  • 顧客の利益を常に創造する
  • 顧客の課題を発見する
  • 顧客の利益となるアドバイスをする

 

なるほどねぇ・・・と読み進めながら、途中で「あれ?」と思った。

 

私は紹介営業というのは、てっきり自社の製品やサービスを使ってくれる顧客を紹介してもらうものだと思っていた。紹介された相手を訪ねると、ほぼ契約がもらえるといった具合だ。ところが著者のポイントによれば、紹介営業とはそうした類のものだけではないようだ。

 

私の経験では、紹介営業はストレスがなく効率が良いが、一番の問題点は紹介される顧客は紹介者よりも規模や信用度などの点で劣ることが多い点だ。そのため紹介営業だけに頼っていると、顧客がどんどん小粒になりジリ貧に陥る。そのため、紹介ではない新規顧客の開拓が欠かせなくなる。

 

これに対し、著者の言う「紹介営業」は、見込み客の紹介だけではなく、人脈の紹介も含まれており、むしろこちらがメインのようだ。

 

具体的なイメージで表すと、紹介してくれる既存顧客が、『私の知ってる人を紹介しましょう。後は彼と話をして、互いにメリットになるような仕事をしてください』といった感じだろうか。互いの人脈というネットワークから新しい価値を生み出すことが紹介営業という訳だ。

 

つまり営業プロセスの最初の準備や探客(リサーチ&リストアップ)、アポイントまでが省略されているだけで、その後は通常の営業よりも高度なレベルの商談が求められる。時には自分の会社が扱っている商材をセールスするだけではダメで、顧客の利益のために何かプラスアルファを付け加えることも必要だろう。

 

また紹介された顧客との間でビジネスを進められなければ、紹介してくれた既存顧客の顔に泥を塗りかねない。例えばあなたが既存顧客のAさんから、見込み客のBさんを紹介されたとしよう。しばらくしてAさんと会ったBさんがこんな話をしたらどうなるだろう。『先日、あなたに紹介された〇〇さん(←あなたのこと)、あれからいろいろ話をしているけど、ちょっとウチでは難しいみたいだね』

 

これではAさんのメンツは面目丸つぶれで、おまけにBさんから、あたかも『役に立たないヤツを紹介されても困るんですよ』と言われたようなもので、AさんとBさんの関係にもヒビを入れかねない。こうなるとAさんはもうあなたに自分の知り合いを紹介してくれないだろう。

 

紹介営業はストレスがない楽な営業だと思っていたら、実態はそうではなく、失敗のできないプレッシャーのかかった営業手法だ。楽をして成果を上げる営業といった「魔法の杖」はないのかもしれない。