よもやま茶飯事

心に浮かんだことを書き綴ります

枕草子・第27段 心ときめきするもの

 

第27段 心ときめきするもの

 

心ときめきするもの
期待や不安で心がドキドキするもの

雀の子飼 稚児(ちご)遊ばする所の前渡たる
スズメの子を飼う時、幼い子どもが遊んでいる前を牛車で通る時(※)

※ スズメの子が逃げたり死んだりしないか、幼い子供が牛車にひかれたりしないかと思ってハラハラする

よき薫物(たきもの)焚きて 一人臥(ふ)したる
上質の香を焚いて、一人で横になっているとき

唐鏡(からかがみ)の少し暗き 見たる
異国の鏡に少し曇りがあるのを見たとき(※)

※ 解釈には諸説があり、当時の中国の上質な鏡には曇りが生じることがあったという説や、鏡が曇ることで自分が美しく見えるさまを書いたものという説。また中国には宝鏡という不思議な鏡があり、人の心を映し、妖怪の存在を見破ったとされた。この鏡は日食や月食が近づくと曇りが生じたことから、この唐鏡がこの宝鏡のようであるように思え「心ときめく」という説など

 

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徒然草・第15段 いづくにもあれ

徒然草の第15段は「いづくにあれ」(旅はどこであっても)。旅は日常を離れ、新たな発見をもたらしてくれます。そんな旅の魅力を兼好法師が語ります。

 

第15段 いづくにもあれ

 

いづくにもあれ しばし旅だちたるこそ 目覚(さむ)る心地すれ
どこであろうと、しばらくの間旅に出ることは、目が覚めるような心持ちがする

 

そのわたり ここかしこ 見歩(あり)き 
その辺り、此処彼処と、見て歩くと

 

田舎びたる所 山里などは いと目慣れぬ事のみぞ多かる
田舎めいた所や、山里などには、とても見慣れないものが多い

 

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枕草子・第26段 にくきもの (第2回 / 全2回)

枕草子・第26段「にくきもの」(憎らしいもの)の第2回・後半をお届けします。第1回の前半部はこちら

 

第26段 にくきもの 第2回

 

あながちなる所に隠し伏せたる人の いびきしたる
忍んで来た男を無理な所に隠して寝させたら、いびきをかいているのは憎らしい

 

また忍び来る所に 長烏帽子(ながえぼし)して
また、こっそり忍んで女の所に来るのに、邪魔になる長い烏帽子をかぶって

 

さすがに 人に見えじと
されど、人に見られないようにしようと

 

惑(まど)い入るほどに 物に突きさはりて
あわてふためいて入る時に、長烏帽子が物に突き当たって

 

そよろといわせたる
ガサッと音を立てるのは憎らしい

 

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枕草子・第26段「にくきもの」(第1回 / 全2回)

枕草子・第26段は「にくきもの」(憎らしいもの)。ここでは似合わない、不釣り合いなものを憎らしい、いまいましいとして取り上げています。清少納言の観察眼が光ります。長い段のため、2回に分けて掲載します。

 

第26段 にくきもの

にくきもの
憎らしいもの

 

急ぐ事ある折に来て、長言(ながごと)する まろうど
急用がある時にやって来て、長話をする客

 

あなづりやすき人ならば
軽くあしらってもよい人なら

 

「後に」とても遣(や)りつべけれど
「後で」など言って、帰してしまうことが出来るだろうが

 

心はづかしき人 いと憎く難し
こちらが気後れするほど立派な人の場合は、それもできず、ひどく憎らしくやっかいだ

 

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徒然草・第14段 和歌こそ なお おかしきものなれ

徒然草の第14段は、和歌についての兼好法師の自論が展開されます。平安時代の人が読んだ和歌は今(鎌倉時代)に比べて、もっと素直で安らかで、歌の姿も清らかで、趣も深いと述べています。

 

第14段 和歌こそ なお おかしきものなれ

 

和歌こそ なおおかしきものなれ
和歌こそは、なんと言っても趣深いもの

 

怪しのしづ 山がつのしわざも
卑しい身分の低い者や、山の木こりなどの行いも

 

言い出(い)でつれば おもしろく
和歌に言い出せば、趣があり

 

おそろしき猪(い)のししも
恐ろしいイノシシも

 

「ふす猪の床(とこ)」と 言えば
「ふす猪の床」(※)と、和歌に詠めば

※イノシシが冬眠のために集めた枯草の寝床


やさしくなりぬ
優雅になってしまう

 

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枕草子 第24段・第25段

枕草子・第24段は「たゆまるるもの」(気が緩むもの)、第25段は「人にあなづらるるもの」(人にあなどられるもの)、共に短い段なので、まとめて掲載します。

 

第24段 たゆまるるもの

 

たゆまるるもの
自然に気が緩むもの

 

精進の日の行い
仏道精進の日の勤行は、精進がすぎる余り、かえって気が緩む

 

遠き急ぎ
はるか遠い先の支度や

 

寺に久しく籠りたる
お寺に長い間、籠もっている時も、気が緩む

 

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徒然草・第13段 ひとり灯のもとに

 

第13段 ひとり灯のもとに

ひとり灯(ともしび)のもとに 文を広げて
一人で灯りの下で、書物を広げて

 

見ぬ世の人を 友とするぞ
見も知らぬ世の人を、友とすることこそ

 

こよなう慰むわざなる
こよなく心が慰められるものである

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