第2回の段では、中宮・定子は一条天皇の御前で女房たちに対し、今すぐ思いつく和歌を書くように命じていました。その後、この第3回の段では、和歌の上の句を読み上げ、その続きを答えるようにという試験を始めます。
清少納言たち女房は帝の御前ということもあり、緊張して誰も満足に答えることができません。そんな様子を見て、定子は一条天皇の祖父である村上天皇とその女御のエピソードを語り始めます。
清涼殿の丑寅の隅の (3/4)
古今の草子を御前に置かせたまいて
中宮さまは、古今集の本を手元にお置きあそばされて
歌どもの本(もと)を仰せられて
いろいろな歌の上の句を仰せになり
「これが末(すえ)いかに」と 問わせたまうに
「この歌の下の句は?」と、お問いあそばすのに
すべて夜昼 心にかかりて おぼゆるもあるが
連日、夜も昼も、念頭にあって、自然に浮かんでくる句が
け清(ぎよ)う 申し出(い)でられぬは いかなるぞ
まったく申しあげられないのは、どうした事か