これまでガン保険も含めて医療保険は入る意味があまりないと思っていた。日本では公的医療保険がある程度のレベルで整備されているし、仮に自己負担額が重くなっても 高額療養費制度によって自己負担の上限が定められているから、あえて民間の保険で備える必要もないだろうと考えていた。
しかし、「ヒトはなぜ「がん」になるのか」という本を読んで考えが変わった。公的医療保険があっても、「がん」については別扱いにした方が良さそうだ。
この本を読んでいると、ガンには一人ひとりの変異した遺伝子に応じた治療と、進化し続けるガン細胞に応じた治療が必要になることがわかる。
そうした個人別の治療方法が確立されるまでは、まだ数十年はかかるだろう。私が生きている間には実現できそうもない。
それまでの間は、ガンを完治させるのではなく、ガンと共存するような治療が中心になりそうだ。そうなると自ずと治療期間は長くなり、経済的な負担は今以上に増すのではないだろうか。
さらに一人ひとりのガン細胞の進化のプロセスに応じた治療になると、公的保険が適用されない治療や薬の適応外使用も増えるだろう。ガン治療と抗がん剤は日進月歩しているから、公的保険の適用は遅れ気味にならざるを得ない。
治療の個別化と長期化、公的保険が適用されない自由診療に備えて、ガンだけは医療保険に入っておく方が良さそうだという思った。発生する確率は低いものの、実際に生じると損害が大きい「テールリスク」に備えるという保険本来の目的にも合致している。
契約したのは損害保険会社から発売されている「実費補償型」というタイプの保険にした。これは損害保険会社らしく、ガン治療によって生じる自己負担分だけを補償する新しいタイプの保険だ。
従来の日額補償型のガン保険は予め契約に定められた要件を満たせば、誰でも同じ金額と日数分が支給される。これだと治療期間の長期化への対応は十分でないかもしれないと思った。その点、「実費補償型」なら経済的な負担をより広くカバーできる。
現在、「実費補償型」のガン保険はSBI損保とセコム損保の2社しか発売されていない。この後、仮に他社からも発売されれるようになれば、その時点で乗り換えればよい。損害保険契約なので1年ごとの契約更新が原則で、満期返戻金もないため、乗り換えのハードルは低い。もっとも保険には入っても、使わずに「掛け捨て」になるのが望ましい。