よもやま茶飯事

心に浮かんだことを書き綴ります

枕草子・第8段+第9段

第8段は四季折々の風情を描いた短い一段。それに続きさらに短い第9段が続きます。

 

第8段 正月一日、三月三日は

 

正月一日 三月三日は いとうららかなる
正月一日、三月三日は、とてもうららか

 

五月五日 曇り暮らしたる
五月五日の節句の日(※)、一日中曇り

※この日は菖蒲を屋根に葺き、薬や香料を入れた袋を造花や糸で飾った薬玉(くすだま)を作り、柱などにつるして邪気を祓った

 

七月七日は 曇りて 夕方は晴れたる空に
七月七日は、曇っていて、夕方の晴れた空に

 

月いと明(あ)かく 星の数も見えたる
月がとても明るく、星の数も数えられそうに見える

 

九月九日は 暁がたより雨少し降りて
九月九日(※)は、夜明けから雨が少し降り

※この日は重陽節句で、菊の花を飾って、長寿を願った。古来中国より、菊は不老長寿の薬効があるとされた。前日から菊の花に綿を被せて、露で濡れた綿で身を拭うい、老いを忘れるという風習もあった。その描写が続きます

 

菊の露も こちたく
菊の露も、たくさん

 

覆いたる綿(わた)なども いたく濡れ
菊を覆った綿なども、ひどく濡れ

 

うつしの香(か)も もてはやされて
移り香も、いっそう芳しく

 

つとめては 止みにたれど なお曇りて
早朝には、雨は止んだが、なお曇って

 

ややもせば 降り立ちぬべく見えたるも おかし
ともすれば、露が降り始めるように見えるのも、趣がある

 

<三巻本・枕草子 第8段 了>

 

第9段 喜び奏するこそおかしけれ

 

喜び奏するこそ おかしけれ
帝に叙位・任官のお礼を申し上げる儀礼こそ、趣がある

 

後ろをまかせて
衣服の裾の後ろを長く引き出したまま

 

御前(おまえ)の方(かた)に 向かいて立てるを
帝のお座りになられている方角に向かって立っているのは、なんともすばらしい

 

拝し舞踏し 騒ぐよ
拝礼をして、袖を翻すようにして礼を表し、激しく舞う(※)

※昇進に際して喜びを表現する中国式の作法

 

<三巻本・枕草子 第9段 了>

 


【おまけ】

宮中では春と秋に人事異動がありました。9段は8段の続きと考えると、秋の宮中での出来事の描写と言えそうです