徒然草の第4段「後の世の事 心に忘れず」はとても短いため、第5段「不幸にして愁に沈める人の」と合わせて掲載します。
第4段 後の世の事
後の世の事 心に忘れず
後の世の事を、心に忘れず
仏の道 うとからぬ 心にくし
仏の道について、疎くならない生き方は奥ゆかしい
<徒然草・第4段 了>
第5段 不幸にして愁に沈める人の
不幸にして愁(うれい)に沈める人の
予期せぬ不幸に見舞われて、悲しみに沈んでいる人が
頭(かしら)降ろしなど
髪を降ろして僧になるなどの
ふつつかに 思い取りたるにはあらで
浅はかな、思いに至るのではなく
有るか無きかに 門(かど)さしこめて
いるかいないのかわからないように、屋敷の門を閉ざして
待つこともなく 明し暮らしたる
世の中に期待することもなく、暮らしている
さるかたに あらまほしき
そんな風に、ありたいものである
顕基(あきらもと)中納言の言けん
源顕基(※)中納言が言ったように
※後一条天皇の下で権中納言となるが、天皇崩御により出家し、山寺でひっそり暮らした。父である源俊賢は清少納言や紫式部が活躍した時代に、藤原公任・斉信・行成らと共に「一条朝の四納言」と称された。
配所の月 罪なくて見ん事(※)
流罪の地で見る月は、罪のない身で見てみたい
※これは源顕基が絶えず口にしていた言葉として伝えられる。源顕基の祖父、源高明は969年、藤原氏の陰謀により「安和の変」に連座して有罪になり、大宰府に左遷させられる。
さも覚えぬべし
まことにそのように思われる
<徒然草・第5段 了>